ノーベル化学賞・吉野彰氏「リチウムイオン電池開発」の先にある未来!
2019年のノーベル化学賞が、旭化成名誉フェローの吉野彰さんら3名が受賞することに決まりました。
吉野彰さんは、日本人で28人目のノーベル賞受賞者になります。
あとの2人は、米・テキサス大学教授のジョン・グッドイナフさんと、米・ニューヨーク州立大学特別教授のスタンリー・ウィッテンガムさん。
The 2019 #NobelPrize in Chemistry has been awarded to John B. Goodenough, M. Stanley Whittingham and Akira Yoshino “for the development of lithium-ion batteries.” pic.twitter.com/LUKTeFhUbg
? The Nobel Prize (@NobelPrize) October 9, 2019
3人はそれぞれ、リチウムイオン電池の開発になくてはならない一歩を、開発史に刻んでいます。
ウィッテンガムさんはリチウム利用の電池開発に早くから着手しましたが、実用化には至りませんでした。
グッドイナフさんは電池の正極にコバルト酸リチウムを用い、大きな電圧を得ることに成功しました。
そして吉野さんが、グッドイナフさんが開発した正極をベースに、特殊な炭素材料を負極に用いることで、リチウムイオン電池の基本構成を確立しました。
ところで、リチウムイオン電池とはどういう特性を持つものなのでしょうか?
リチウムイオン2次電池の今後の可能性とは?
リチウム電池と一口に言っても、1次電池と2次電池という違いがあります。
1次電池は、ボタン電池や乾電池などの使い捨てタイプになります。
2次電池は、スマホ、ノートパソコン、デジタルカメラ、電気自動車(EV)などに使用される、充電を繰り返すことが出来るタイプのものを言います。
今回のノーベル賞の対象になったのは2次電池の方で、1991年の実用化以来、モバイル社会へと移行することに寄与し、クリーンエネルギーの普及にも貢献したことが評価され、授賞理由となりました。
リチウムイオン2次電池の今後は、現代の情報化社会を支えるだけでなく、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの発電量の不安定さを補うために、リチウムイオン2次電池にためて使うことで、地球温暖化対策にも大きく貢献することが期待されています。
電気自動車を一家に1台保有するようになると、自宅で太陽光発電した電気を電気自動車のリチウム電池にためて置き、それを自宅で使用し、余った電気は売却するというような生活も可能になります。
ノーベル化学賞受賞者・吉野彰さんてどんなひと?
小学4年のころ、担任の先生が教えてくれた英国の科学者、マイケル・ファラデーの『ろうそくの科学』を読んだのが、科学に興味を持つようになった最初とのこと。
ファラデーのこの本は、
ろうそくはなぜ燃えるのか?
ろうそくの炎が黄色いのはなぜか?
ろうそくの芯はなぜあるのか? といったことを、やさしく教えてくれる本になっています。
この話をマスコミが伝えると、アマゾンにはこの本の注文が殺到し、
10日の10時ころには一時的な品切れになってしまったようです。
出版元の岩波書店とKADOKAWAは、ともに増刷を決定したそうです。
まさに、吉野さん効果ですね!
吉野さんの出身高校は、大阪府立北野高校。
高校時代は水泳部に所属し、スポーツに打ち込んでいました。
フリーアナウンサーの有働由美子さんや、元大阪府知事の橋下徹さん、故人でマンガ家の手塚治虫さんなどが、北野高校の同窓生にいます。
学校を上げて、吉野さんのノーベル化学賞受賞を祝福していました。
京都大学工学部に進み、入学当初は考古学に熱中していて、遺跡発掘に励んでいました。
いまも専門分野以外の物の見方も知っていた方がいい、という考えを持っているようです。
考古学の経験はその後、時代の流れを見ることに役立ったと言っています。
当時、旭化成は、繊維会社から新しい分野に挑戦し始めた時期に当たり、吉野さんが中心になって、研究チームが立ち上げられました。?
好きな言葉は、「好奇心」と「洞察力」。
研究者は、柔らかい頭とあきらめない執着心が必要で、双方のバランスをとることが大切だという信念を持っています。
ノーベル賞を受賞した日本人
吉野さんは、28人目のノーベル賞受賞者になります。
では、歴代の受賞者はどんな方たちなのか、見てみましょう。
①湯川秀樹 (ゆかわ・ひでき) 1949年 物理学賞
②朝永振一郎 (ともなが・しんいちろう) 1965年 物理学賞
④江崎玲於奈(えさき・れおな) 1973年 物理学賞
⑤佐藤栄作 (さとう・えいさく) 1974年 平和賞
⑥福井謙一 (ふくい・けんいち) 1981年 化学賞
⑨白川英樹 (しらかわ・ひでき) 2000年 化学賞
⑩野依良治 (のより・りょうじ) 2001年 化学賞
⑪小柴昌俊 (こしば・まさとし) 2002年 物理学賞
⑫田中耕一 (たなか・こういち) 2002年 化学賞
⑬南部陽一郎 (なんぶ・よういちろう)《米国籍》 2008年 物理学賞
⑭小林誠 (こばやし・まこと) 2008年 物理学賞
⑮益川敏英 (ますかわ・としひで) 2008年 物理学賞
⑯下村脩 (しもむら・おさむ) 2008年 化学賞
⑰根岸英一 (ねぎし・えいいち) 2010年 化学賞
⑱鈴木章 (すずき・あきら) 2010年 化学賞
⑳赤崎勇(あかさき・いさむ) 2014年 物理学賞
㉑天野浩(あまの・ひろし) 2014年 物理学賞
㉒中村修二(なかむら・しゅうじ)《米国籍》2014年 物理学賞
㉓梶田隆章(かじた・たかあき) 2015年 物理学賞
㉘吉野彰(よしの・あきら) 2019年 化学賞
日本国籍の方だけだと、25人目になりますね。
物理学賞が11名(9名)、化学賞が7名、医学生理学賞が5名、文学賞が3名(2名)、平和賞が1名というのが内訳になります。()内は、日本国籍以外の方を除いた場合の数字です。
ノーベル化学賞の賞金っていくらもらえるの?
2019年のノーベル賞受賞者は、900万スウェーデンクローナ(約1億円)の賞金がもらえます。
吉野さんは、何に使うのでしょうね?
某テレビ局の直撃取材では、若い研究者の育成のために「吉野基金」というのを作っているので、ノーベル賞の賞金の一部はその基金に使いたいと語っていました。
ノーベル賞の賞金は、ダイナマイトの発明者であるアルフレッド・ノーベルが残した遺産を資産運用した運用益から出されています。
ノーベル基金の運用がうまくいってない時期は、賞金が引き下げられたこともあったようですが、最近は調子がいいようなので、最近は増額されているようです。
最近の企業の動きとして、中央研究所を廃止する傾向にあり、将来にむけて、日本の基礎研究を不安視している関係者が多いのが気になります。
日本の未来のために、しっかりと基礎研究ができるだけの環境を確保し、ノーベル賞を取り続けられることを期待したいですね。