チリバブルの実態とは? 激辛グルメブームの裏側!
チリバブルとは?
激辛カレー、激辛ラーメン、激辛麻婆豆腐、激辛スナックなど、
いま日本では、激辛グルメが大流行していますが、
その激辛ブームを陰で支えているのが、「激辛唐辛子」の開発競争です。
もっとも辛いトウガラシの栽培競争をする人たちを指す「Chiliheads」(チリヘッズ)と呼ばれるコミュニティが、主に米国、英国、オーストラリアにあります。
彼らは、常により辛いトウガラシの種子を求め、一獲千金の夢を追い続けています。新しい激辛唐辛子の種は、巨大な利益を生む金の鶏なんですね。
たとえばアメリカでは、唐辛子を使ったホットソース市場が、最も急成長している産業の一つになっており、その市場規模は10億米ドルと推定されています。
ホットソースのラベルに「最も辛い」という称号を与えられた唐辛子の名前を使用すると喜ばれる傾向があります。そのことが、より辛いトウガラシを作り出す競争に、拍車をかけているようです。
2011年に、「世界で最もホットなチリ」としてギネスに認定されたナガバイパーの開発者(イギリス)は、種子とホットソースの販売開始から1か月間で、40,000米ドルを稼ぎました。
2012年にギネス記録を塗り替えた、トリニダードモルガスコーピオンの開発者(トリニダード)は、種子を販売開始してわずか2日で、10,000米ドルを稼ぎました。
「Chiliheads」という言葉は、もともとは「チリペッパーやチリコンカルネの好きな人」という辛い物好きを指すスラング(俗語)だったようですが、いまでは、激辛唐辛子でひと儲けをたくらんでいる人を指すスラングに変わってしまっているようです。
このように激辛唐辛子をめぐる開発競争が激化し、経済がヒートアップしている状況を指して、業界では「チリバブル」と呼んでいます。
でも、われわれ日本人には、あまりなじみのない世界ですね。
日本では、お店レベルでの激辛グルメの流行だけが伝えられていますが、
世界ではその裏で、ホットペッパーマネーをめぐる熾烈な経済競争が行われていたわけです。
スーパーホット誕生! 唐辛子の歴史が変わる!
辛さのランキングを決めるのに使われるのが、「スコヴィル値(SHU)」という世界基準の単位です。
ランダムに選んだ一束のトウガラシから求められる、カプサイシン(辛味受容体の神経末端を刺激する成分)の割合の平均値で表されます。
1994年にハバネロ・レッドサビナが世界一になった時には、「これ以上に辛いトウガラシは作れない」と信じられていました。
しかし、2007年、スーパーホット(スコヴィル値が100万以上)の「ブート・ジョロキア」が登場し、それ以後はぞくぞくとスーパーホットの品種が作り出されてきました。
現在も、ギネスの「世界一辛いトウガラシ」部門には、われこそ世界一という激辛唐辛子の申請が届き続けていますが、認定作業が追い付かず、新しい認定品がなかなか出て来ない状況になっているようです。
そのため自称「世界一」のトウガラシを売り込む業者が、トウガラシのタネを取引するマーケットであとを絶たないとのこと。
チリバブルの実態は、かなり混沌としたものになって来ています。
激辛唐辛子ランキング! 2019年まで!
最後に、ギネスが認定した激辛唐辛子(ホットチリ)NO.1の歴史を紹介したいと思います。
2019年現在、アメリカのエド・カリーによって作られた「ペッパーX」が、まだギネスには認められていませんが、現状、世界最大のスコヴィル値を持ったスーパーホットペッパーです。
1994年、ハバネロ「レッドサビナ」(50万SHU)が世界一に認定。激辛唐辛子ブームの火付け役となりました。
2007年2月、「ブート・ジョロキア」認定。北インドおよびバングラデシュ産。世界初の「Super Hot」(スコヴィル値が100万以上)のトウガラシが登場しました。
2011年2月の2週間だけ、「インフィニティ・チリ」(106万SHU)が世界一の座に就きました。こういうのを「三日天下」というのでしょうね。
2011年、「ナーガ・ヴァイパー・ペッパー」(138万2,118SHU)、認定。イギリスで作成されたもの。
2011年3月1日、「トリニダード・スコーピオン・ブッチ・ テイラー」(146万3,700SHU)、認定。トリニダード・ドバゴ共和国産。防護服無しには調理できない、と言われています。料理人に生命の安全を確保する行動を要求するとは、どれほど激辛なんだ。
2011年は、激辛トウガラシ界の下克上が激しかった年で、短期間に目まぐるしく世界一が入れ替わっています。
2012年、「トリニダード・モルガ・スコーピオン」(200万9,231SHU)、認定。トリニダード・ドバコ共和国産。
2013年〜2016年「キャロライナ・リーパー(死神)」(220万SHU)認定。米国サウスカロライナ州産。「死神」という名が付けられたトウガラシです。
ニューヨーク州ブルックリンで行われた「キャロライナ・リーパー大食いコンテスト」で、「キャロライナ・リーパー」を食べた男性が、「雷鳴頭痛」に襲われ病院に運ばれるという事件が起こりました。数日間、頭が割れるような頭痛に苦しみ、その後、自然に回復したということです。まさに「死神」のなすワザですね!
もっと驚くのは、このコンテストで優勝したジャマイカ出身の男性が打ち立てた記録で、なんと1分間に22個も食べたということです!どんな体をしてるんでしょうね!
2017年、「ドラゴンズ・ブレス・チリ」(248万SHU)、認定。英国ウェールズ産。「ドラゴンの息」という名のトウガラシです。辛さが危険すぎて食用には向かないということですが、麻酔薬の代用品として使えないか、研究が続けられているそうです。かなり、ぶっとんだ領域に入って来ていますね!
一般の人がスーパーホットレベルのトウガラシを食べると、呼吸困難や激痛、皮膚の炎症、手足の痙攣、めまいなどの症状に襲われる恐れがあるとのことなので、調理の際は十分ご注意ください。
最近は、ネット・ショップでもいろいろなスーパーホットチリ製品を売っているので、安全に気を付けながら楽しみましょうね!
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