ライスレディ 塚原知里の仕事が、ハンパない!
塚原知里さんは、パナソニックの「キッチンアプライアンス事業部 炊飯器事業 炊飯器技術部」に所属しています。
この「炊飯器設計」のスペシャリストチームを、パナソニックではライスレディと呼んでいます。
塚原さんは、6人いるライスレディの一員として、炊飯器のプログラミング開発に携わっています。
ライスレディをひとことで言い表すなら、”炊飯科学のプロ”です。
塚原知里さんは、1990年(平成2年)生まれの千葉県出身。
2015年(平成27年)に、お茶の水女子大学大学院食品栄養科学コースを卒業。パナソニックに入社しました。
大学時代は栄養学を学んで、食についての知識を深め、管理栄養士の資格も取得しました。
一時は食品メーカーに就職することも考えましたが、食事をつくる「調理」を通して、人々の健康な食生活に関わりたいと思ったのが、現在の調理家電を作る仕事を志望した理由でした。
塚原さんの趣味は、美味しいものを食べることと旅行で、学生時代から今に至るまで、長期の休みには海外に出かけることが多いそうです。
フィンランドへオーロラを見に行ったり、エジプト、カンボジアには遺跡を見に行きました。スペイン、イタリアなどヨーロッパや、韓国、ベトナム、タイなどアジア諸国へも足を延ばしています。
旅行先で美味しい食に出会うのも目的のひとつとのこと。
海外で長粒米のインディカ米のごはんを食べた時は、「どうやったらもっとおいしく炊けるかな」と、仕事モードになってしまうこともしばしばだとか。
また、日本全国のお米の産地を訪れることも多く、炊飯器開発の仕事を通じて、お米の奥深い食文化を知るのがとても楽しい、と語っています。
塚原さんの仕事は、調理科学にもとずいて、「どうすれば日本人誰もがおいしいと感じるごはんが炊けるか」を研究すること。
実際にどういうことをやっているかというと、毎日5~6回ご飯を炊いて、炊飯と試食を繰り返して、炊いたご飯の硬さや糖度を調べています。計測機械を使うこともありますが、基本的に自分自身の「味覚」に基づく判断を重視するとのこと。新製品開発が続く時期は、お茶碗7杯食べる日もあるそうです。
50以上の銘柄米の味を、味覚、嗅覚などの五感をフル活用して分析し、銘柄ごとに違った美味しさを引き出す炊飯プログラムを開発しました。
塚原さんが中心となって開発した、「Wおどり炊き」!
現在、日本のお米の銘柄は700以上もあると言われており、それぞれひとつひとつ違った特性を持っています。
パナソニックでは、各銘柄米の特性をひとつひとつ科学的に調査して、銘柄に合わせた炊き分けのプログラムを開発。そうして誕生したのが、パナソニックの高級炊飯器「Wおどり炊き」です。
「Wおどり炊き」は業界最多の50銘柄の炊き分けに対応する「銘柄炊き分けコンシェルジュ」を搭載し、50種類の銘柄米の一つひとつの個性に合わせて、Wおどり炊きが最適な火加減に調整して美味しさを引き出すようになっています。
この「銘柄炊き分けコンシェルジュ」の開発に取り組んだのが、炊飯科学のプロ集団「ライスレディ」の六人です。
塚原さんが中心となり、50以上の銘柄米の味を、五感を総動員して分析。それぞれのおいしさを引き出す炊飯プログラムを実現しました。炊いては食べ、炊いては食べを繰り返し、プログラムを修正して、生産者の求める美味しさを引き出す炊飯器に仕上げました。
開発段階では、それぞれの銘柄米開発者のところを訪ね、試作機で炊いたごはんを試食してもらって、意見を求めたということです。
この努力の結果として、パナソニックの「Wおどり炊き」は、全国各地の6つの銘柄米産地から、「一番おいしく炊ける炊飯器」として推奨されることになりました。
6つの銘柄は、北海道産「ゆめぴりか」、岩手県産「金色の風」、宮城県産「だて正夢」、秋田県産「あきたこまち」、新潟県産「新之助」、福井県産「いちほまれ」の6つです。
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「Wおどり炊き」の秘密とは?
塚原さんたちは、 最新技術で昔ながらのかまど炊きを超えるおいしさを目指して、かまど炊きの火加減を徹底的に分析しました。
「初めちょろちょろ、中ぱっぱ、赤子泣いてもふた取るな」
これは、かまどに羽釜をかけてご飯を炊いていた頃の、美味しくご飯を炊くためのノウハウを短い言葉で表したものです。塚原さんたちは、この言葉が語っている火加減を、炊飯器で実現することに挑戦しました。
釜の中で、強力な泡の熱対流を生み出す「大火力おどり炊き」と、お米を加圧と減圧で対流させて芯まで加熱する「可変圧力おどり炊き」、この2つの「おどり炊き」をIHコイルの切り替えで併用することで、かまど炊きの火加減を実現しました。これが「Wおどり炊き」です。
「はじめチョロチョロ」の工程でお米の芯まで水を吸わせ、「中パッパ」のところで強い火力でムラなく沸騰させます。
釜の中が沸騰したら、吹きこぼれないように中火で、お米一粒一粒の中まで均一に火を通すように沸騰を維持します。これが美味しいご飯を炊く秘訣です。
さらに15分くらい加熱を続け、釜の中の水分がなくなったら火力を止めます。最後の「赤子泣いてもふたとるな」の工程は、15分程度蒸らしています。
「Wおどり炊き」は、米の量や水加減がいつもと同じでも、ボタン1つでお好みの炊き上がりにできる「食感炊き分け」機能を備えています。
圧力の強弱、加圧する時間、スチーム加熱の有無や温度の自動調整などで、お好みの食感に炊き上げます。
さらに、お米を洗ってすぐに炊いても美味しいごはんが炊ける、「旨み熟成浸水」機能がついています。
45~55℃の温度帯で浸水させながら前炊きすると、長時間浸水しておかなくても、お米の酵素がよく働いてでんぷんを分解し、旨み成分であるアミノ酸がつくられ、甘みを増やすのです。
かまど炊きは、おこげができるまで強火で加熱して、ハリのある食感と美味しさを作り出します。しかし、炊飯器でおこげを作ると食べるところが減ってしまいます。
そこで開発されたのが220℃IHスチームで、旨みをコーティングしてハリを出すので、冷めてもおいしいごはんが炊くことができます。